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本編: Blog2

第一章④

  • 執筆者の写真: 藤ノ樹
    藤ノ樹
  • 2020年2月18日
  • 読了時間: 15分

「…なぜこれだけの軍勢に対してそれだけ奮闘出来るのですか?あなたたちはBランク帯のはずでは?」  クリフの言う通りロワーブたちは100体あまりいる敵の有象無象に対して善戦している。決して優位に立てているわけではないが、前線は決して後退せず維持を続けている。カトナーの広範囲の攻撃で敵を追い返し、迫ってきた敵にはロワーブのハウリングで対象を集中させる。テンソがヒットアンドアウェイで翻弄し、ラパンとグラハムは仲間のサポートをしつつ時折攻撃を行う。一人一人のポテンシャルも高く、互いのバランスもいいため持久戦に向いているパーティだと言えるのだ。 「俺たちは根性あるんだよ!お前らが何人束になってかかってきたって、返り討ちにしてやるからな!」  ロワーブはぐっと足を踏ん張り前線を押し上げようと一閃の剣戟と共に一歩踏み出す。その間に何体ものグールとアンデッドが彼に襲い掛かり傷を負わすが、それでも彼は止まらず前に出る。 「…!ロワーブ、無理をするな!」  テンソがロワーブを取り囲んでいる敵たちを薙ぎ払い、処理をしていく。それに次いでグラハムの治癒魔法が彼らに掛けられる。先ほどのものより強力な魔法のようで傷がどんどん塞がっていくが、それでも完全には回復しきれない。それだけに敵の数が多いのだ。

「…まずいですね。少しずつ押されてきています。ロワ君も頑張ってくれているけど、グラちゃんの回復が追い付いていない。」 「ご、ごめんよ!おいらの力不足だー!」 「そんなことありません!アンデッドに攻撃もしてくれてるんですから、限度があるのは当たり前です!ラパちゃん、敵の足止めをお願い!」 「了解!まっかせなさい!【双児宮】そして【処女級・極冬】」  ラパンが双児宮のシンボルとmとℓを合わせたようなシンボルを展開し、射出する。それらは10本以上の矢となりロワーブたちの前にいた敵に無作為に刺さっていくと、それらが当たった個所がどんどん凍結していき敵の動きを鈍らせていく。 「よっしゃ!チャンスだ!テンソ!」 「…あいわかった。」  ロワーブとテンソが横並びになると、その凍り付いたグールたちにめがけて駆け出していく。そしてお互いが力強い一撃を振るうと、動けず悶えていたグールたちが切り裂かれていった。さらに左右にいた敵をカトナーのウンディーネとシルフがそれぞれ吹き飛ばしていく。 「グールはいいけど、難儀なのがアンデッドの方よね。あいつら防御力たっかいからあたしの矢じゃ何のダメージも与えられない!」 「お、おいらがやるよ!【反故】ブラウンルチルクォーツ!そしてデモルフォセカの癒し!」  グラハムがアンデットが固まっている場所を囲むように反射の特性を持つ防御魔法を展開する。そしてその中が黄緑色の優しい光に満たされたと思うと、突如アンデッドたちは呻き苦しみだし、障壁の外に出ようとする。が、それらは虚しくはじかれて自らの仲間に突進する形で飛ばされてしまう。 「グラちゃん無理しないで!あなたが倒れたら戦況が一気に不利になってしまいます!少しでも休んでください。」  そう言いながらカトナーはさらにその障壁に向かって2体の合わせ技の水竜巻を射出する。その竜巻は障壁に遮られることなく透過していき、中で無数に反射してアンデッドたちを蹂躙する。 「そういうカトナーだって無理しちゃだめよ!ずっとその2体召喚してるじゃない!」  カトナー自身も冷や汗をかいており、そこそこに無理をしているのが分かる。戦闘が始まって一時間近く経とうとしているのに敵勢の減る様子がないため、内面的にもかなり焦りを感じてきている様子だった。 「大丈夫ですわ!もうじき高位の召喚の為の詠唱が終わります!皆さん耐えてください!」 「御意。…俺はまだいける。援護任せたぞ。ラパン。」 「分かってるわよ!」  そう言ってラパンは攻撃力と防御力を上げる金牛宮と巨蟹宮の矢をテンソに放つ。すると、テンソは毒の触手と共に敵陣に突っ込み、クナイや鎖鎌、まきびしや爆弾を用いて処理の速度を一気に上げる。 「くっ!やはりあのコウモリ男が一番警戒すべきでしたか。あやつを狙いなさい!」  クリフのその指示によりグールの軍勢がテンソに向かって殺到しかける…が 「んなことさせるわけねーだろ!こっちだぜ!」  ロワーブが再度ハウリングを発して攻撃対象を自分へと変更させる。そしてその敵勢の流れはロワーブを中心に取り囲むように動く。 「いいですね。最高のポジションですよロワ君!グラちゃん!」 「おっけ~!【抱擁】ターコイズ2枚掛け!」  ロワーブの周囲に球状防御壁を二重に展開する。 「…!あなたたち!離れなさい!」  クリフが慌ててそう言うが、時すでに遅し。カトナーは既に詠唱を終えていて、3メートル近い巨大な魔法陣が彼女の背後に展開されていた。 「さあ!おねがいです!サンダバちゃん!」  彼女は召喚する。いかずちを帯びた羽を持ち獰猛な目を輝かせる鷲の霊獣を。それはサンダーバードと呼ばれるなかなか目にかかることのできない希少な霊獣だ。  その霊獣は甲高い声で方向を上げるとロワーブの周囲にたむろしていたグールたちに強力ないかずちを落とした。一瞬にしてそこらは焼け焦げ、グールたちは跡形もなく消え去っていた。 「すっげえ音!サンダーバード!かっこよすぎるだろ!」 「おいらのバリア2枚掛けが一瞬で溶けちゃったよ~!」 「今の一撃にかなりの魔力を込めましたからね。次は期待しちゃダメですよ。」

「さあ…今のでそっちの味方共は大分削れたようだな?」  テンソはクリフを睨みつけそう言う。彼のグールとアンデッドの軍勢は先の攻防により最初に比べ、3分の1程にまで減少していた。 「これまでの軍勢をたった5人で処理されるとは…あなたたち一体何者です?Bランク程度の冒険者なら6人いても半分も処理できなかったと思うのですが…。」  クリフは実際にその人数を倒したのか、妙に生々しい言い方でそう言い放つ。 「おいらたち、なかなかダンジョン攻略の依頼を受けてこなかったからねえ。ランク上げるの後回しにして個人の依頼ばっかりやってた気がする~」 「あー、どっかの誰かさんのお人よしのせいでなかなかAに上がれてなかったもんね。」 「そういうラパちゃんもいつもロワ君側についてたし、あなたも大概お人よしなのでは?」 「なっ!?そ、そんなわけないじゃない!ちゃんとランク上げだって考慮に入れてたわよ!」

「つまりあなたたちは、Aランククラスの力量があるというのに未だにBランクでくすぶっていたということなのですね。」  クリフは大きくため息をつくと、頭を手で押さえてかぶりを振った。 「誤算でした。まさかそんな愚かな者たちがいるなんて…。」  そう皮肉を言うと彼は目を見開き、周囲に魔法陣を再度展開する。 「さあ、そんな愚か者どもを今一度蹂躙なさい。」  ぶつぶつと何か詠唱のような言葉を紡ぐと、彼は杖を大きく振るう。するとその魔法陣からさらに10体ほどのグールが召喚された。 「冒涜的な喰種たちよ、貴様らの本質をかの者どもへひけらかしなさい。」  そう言うと彼の召喚したグールたちはロワーブたちに倒された同類だったものを喰らいだす。いや、それだけではない。まだ微かに息のあったグールや、さらには活動しているアンデッドたちにまで襲い掛かり、その身や骨を貪り尽くしていくのである。 「さあ、食らいなさい喰らいなさい!あなたは死体を食す喰種たち!骨身に染みるディナーを召し上がれ!」  仲間を喰らったグールたちは明らかに今までのものたちとは動きも姿も変わっていく。同族を食べたグールは肥大化し、筋肉とも脂肪ともいえる肉体は拳の一撃で地面さええぐってしまいそうだ。アンデッドを食べたグールは骨のような鎧や盾が皮膚から浮き出てきて、さらにはとがった槍のような白い骨を剣のように構えている。

「この者たちは貴様らの同類です。ここ、カテルナ遺跡に出来たダンジョンは、どうやら異世界で獣人族の墓として機能していたようですね。死ねばその身をこの地に埋めて、静かに死後の余韻を揺蕩っていたのでしょう。…つまりあなたたちは仲間の死体に負けて、そして私たちに食べられることになるのです。安心してください。食べた後はここで同類たちと共に眠らせてあげますよ。そして使ってあげます。次の同胞を殺すための道具として!!」

 クリフが手を挙げると30ほどの強化された軍勢は一斉にロワーブたちの方へと駆け出す。テンソがいの一番に飛び出し一撃必殺の斬撃を食らわせるが、骨をまとったグールが彼の一撃をその身で受けるとカウンターの一発を骨の剣で繰り出した。 「ぐっ…!っ固いな…!」  その一撃は彼の脇腹を切り裂くが、とっさに回避行動をとったために致命傷にはいたらない。 「うおおおおお!ハウリング!」  ロワーブが咆哮をあげ敵の注目を一身に受ける。防御の能力上昇の矢をラパンが射るが、それを受けた状態のロワーブでさえ数体の肉塊グールから爪の攻撃を受けただけで全身傷だらけになった。 「ガッ…!ハ…ァ!」  ロワーブは痛みをこらえ膝をつきたくなる衝動に襲われるが、震える足を鼓舞して敵の前に立ちふさがる。 「ロワーブ!一度態勢を立て直そう!?デモルフォセカの癒し!」  グラハムは中級治癒魔法をロワーブに連続使用する。 「サンダバちゃん!エレキスぺル!テン君ラパちゃん!ロワ君を補助してください!」  カトナーが召喚していたサンダーバードが周囲に電気を張り巡らせる。そしてテンソはいくつものクナイをロワーブの周囲にいる敵たちに刺していく。 「任せて!【天蠍宮】【双児宮】!」  ラパンも細くて鋭い矢をいくつもグールたちに射出する。 「サンダバちゃん、やっちゃってください!」  カトナーが杖を振りかざすと、サンダーバードは咆哮をあげて先ほど展開した電気を開放する。するとそれらはラパンとテンソがお膳立てした避雷針に吸い込まれるように落雷し、ロワーブの周囲にいたグールたちの体力を一気に削る。 「ハァハァ…どうですか?周囲の被害を出さずに自動で着弾する雷撃は…痛いでしょう?」  カトナーは全身冷や汗をかき片足をついきながらも、クリフをそう挑発する。 「これもおまけしてやるよ…!」  テンソはグールたちに手をかざすと、クナイに付着させていた自分の毒を反応させる。すると数体のグールたちはその強固な体をよじらせ、悶え、何かわからない液体を吐き出しながら絶命した。 「すごいじゃん!テンソ抜かりないわね!」  ラパンも一体のグールに対し、天蠍宮の針と自己強化の金牛宮を展開してそれを頭めがけて突き出し貫いた。 「皆やるじゃねえか!俺も負けねえぞ!そら!」  続いてロワーブも雷撃で弱った鎧のグールめがけて、剣を振り下ろす。するとそのグールの脳天はかち割れ、体を半分に切り裂いた。 「カトナー大丈夫~?アスターの巡礼。」  グラハムはカトナーに駆け寄ると、周囲の環境からマナを抽出し魔力に変換する魔法を彼女にかけて顔をあげ敵の軍勢の動向を観察する。 「大丈夫ですわ。ありがとう。グラちゃん。まだ私は戦えます。」 「ありえません。まだ戦う力が残っているというのですか。ですが、もう大分消耗しているはずです。そうですね…ここで一つ、手を打たせていただきます。」  そう言うとクリフは杖を持った手を指さすようにどこかに向ける。ロワーブたちがその方角へ目をやると、そこは彼らが入ってきた入り口であり、そこから3体の強化前のグールが出ていくのが視認できた。 「どこ行ってんだ?あいつら」 「あなたたちの前に来た3人の冒険者…実はまだ生きていて、これから死ぬことになると言ったら、あなたたちはどうしますか?」 「う、そだろ…!?つまり今出ていったグールたちは…おい、説明してくれよクリフさん。」 「言った通りですよ。今出ていったグールたちにその3人の冒険者を殺してもらおうというのですよ。そしてそれを喰らってパワーアップでもしてもらおうかなと思ってまして。まぁ、折角捕らえたのにグールにやるのはもったいないんですが、仕方ありません。」  冗談めかしてクリフが語るが、その目は笑っていない。事実だということをその視線で感じ取ったロワーブは、即座に扉の方に向けて駆け出していく。 「させませんよ。」  が、何体もの骨や肉塊のグールたちが彼の前に立ちふさがって行く手を阻んでくる。 「どけよ!ぜってえそんなことさせねえぞ!」 「ロワ君待ってください!これで態勢が崩れてしまっては元も子もありません!」 「んなこと言ったってよ…!見過ごすわけにはいかねえだろ!」 「チッ…卑怯者が…!どこまで性根腐らせれば気が済むんだ?」 「…アンタはっ…人の皮をかぶった化け物よ…!」 「あなたたちに化け物と言われる筋合いはありませんね。異形の化け物共は異形の化け物と仲良くしていればいいのです。」  心底不愉快そうに表情を歪めたクリフはグールたちをさらにけしかけてくる。 「ここで皆が助けに行くのは厳しそうだねえ…どうしようカトナ~?」 「くっ!ここで誰か一人でも抜けたら私たちは圧倒的に不利になる…彼はそれをわかっててこんな手を打ってきたんです。私にもっと先を読む力があったらこんなことには…」

「…あたしが行くわっ!」

 ラパンがそう叫ぶ。彼女は拳を握りしめ下を向いて震えている。それが恐怖によるものか緊張によるものか、それとも別のものなのかわからない。それでも彼女は決意を秘めた表情で前を向く。キッとクリフを貫くような目線を投げるとラパンは続ける。 「あたしはどの距離でも戦えるし、出ていったグールたちを追いかける術を持ってる。基本皆の補佐をする役割だから、離脱しても一気に戦況が変わることはない。あたし以上に適している奴が他にいるかしら?」  そう得意げに胸を親指で示すが、その指も微かに震えていることが分かる。戦場で一人孤立して動くということは、致死率が一気に跳ね上がる。それにこれは確実に罠だということは火を見るよりも明らかなのだ。現に今クリフの表情は愉悦ともとれるにやけ面をさらしている。ここで3人の冒険者を助けに行ったところで、本当に彼らがそこにいるかも生存しているかも分からない。もしかしたらオルコ村の村民が束になって襲い掛かってくるかもしれないし、ラパンでも処理できない数の罠を仕掛けている可能性だってなくはないのだ。だからいくら器用に立ち回れる彼女だと言っても、生きて戻れる確率は極々低いと言えるのだ。恐怖するのも無理はない。 「許可出来ません。ラパちゃんが一人でそこまで背負う必要はないのです。3人の冒険者たちが生きている保証だってないのですから!」 「でもあたしは嫌よ!あのままグールをほっといたらいろんな危険性があるってこと、カトナーだったらわかるでしょ!?」 「それは承知してますよ!でも私だって嫌なんです!」

「ラパン…任せていいか?」  突如、ロワーブの声が彼らの会話に混じってくる。それは安心感のする落ち着いた声色で彼女らの耳になじんでいく。敵に囲まれ剣に切られ拳に殴打されていようとも、その声色は確かに彼女らに届いていた。 「ロワ君…何を言ってるんですか?」  カトナーは攻撃の手を止め彼に問いかける。 「本当は俺が先行して行きたいんだけどなー。それだと100パー怒られるから、仕方ないからラパンにゆずるんだぜ?」 「いえいえいえ。誰が行くと言っても私は怒りますよ?こんな危険な賭けに…仲間の命をかけることはできません!」 「カトナー…お願い!行かせて!」 「おいらじゃ何もできないから、だからラパンを応援するんだよ~!」 「…いけるだろ。こいつなら」 「ラパンは強いからな!信じてやろうぜ!姉さんよ!」

そんな全員の声を受けてカトナーは涙混じりの瞳で息を呑んだ。そしていくばくかの間の後に一つただ頷いて 「分かりました。でも、危険を感じたらすかさず戻ってきてください。私はラパちゃんに託します。」  その言葉を聞いたラパンは少しの間カトナーと見つめ合うと、優しく微笑んでこう言った 「まっかせておいて!」 「頼むぜラパン!絶対救ってやってくれよな!」 「ふふん!当り前じゃない!」  そう言って彼女は【白羊宮】と唱えるとボウガンの先にVの先がくるんと丸くなっているシンボルが展開される。そのシンボルは白い光を放ち、矢ではなく紐のようなものが発射されると扉の方角にある柱の一つに巻き付いた。そしてそのままラパンの体はその柱に引き寄せられるように浮き上がり、その射出された紐を巻き取って柱の元へと飛んで行った。 「あたし頑張るから応援しててよね!」  そう言って彼女は手を振ってから先ほどの動きを何度か繰り返すと、あっという間に扉の前まで到達し扉の奥へと消えていった。 「ラパちゃん…お願いしますね。」 「そう心配すんなって!いざとなったら通信魔道具でSOS出すだろ!」 「そう…ですが…」

「ふむ、随分余裕がおありのようで…お仲間が心配なのでしょうが、まず自分の身を守ったらどうですか?」  クリフはここぞとばかりに残り20体程度になった自分の配下たちの攻撃を激化させ、ロワーブたちの体力を見る見るうちに削いでいく。 「うううぅぅぅ…ロワーブ~回復が間に合わないよ!いったん下がって!」  グラハムも全員の傷を癒すのに流石に疲労の色を隠せないでおり、杖を持つ手がかすかに震えている。 「…ちっ!下がるぞリーダー!毒沼戒牢。」  テンソが足裏を地面に押し付けると、そこから毒が地面の土と夜光草を侵食し、グズグズになった腐葉土が敵の足を捕らえて動きを鈍らせる。その隙に前衛2人はカトナーとグラハムの所まで後退し、態勢を整える。 「これでちょっとでもマシになればいいけど~」  そう言って魔道具のバッグに入っていたビンを取り出して中に入っている種のようなものを取り出す。その種の殻をパキリと剥くと、中から緑色の丸薬のようなものが出てきてロワーブたちにそれを手渡した。 「…助かる。」  傷だらけのテンソとロワーブがそれを口に含みカリッと噛み砕いたと思ったら、表情を歪めて薬の不味さを見せるが、体の傷が徐々に回復していくのが実感できた。これはグラハムのスキル【メディシード】によって作られた丸薬で、彼らが服用した緑の丸薬は傷の継続治癒と疲労の回復が可能な薬だった。カトナーとグラハムは青い丸薬を噛み砕き、魔力と精神力を安定させていく。 「ふん。まだ治癒する手段が残っていたとは驚きです。が、そんなものに頼らなければならないほどの状況であると白状したようなものですね。今のは」  彼は手元の何かを確認しながらそうつぶやいた。ラパンが抜けたところでパーティの敵の処理速度が一気に落ち、彼女が出て30分経過した今でも5体程度しか減らせていなかった。

「…そんなあなたたちに素敵なものをお見せしましょう。」  そう言って彼は懐から1枚の鏡のようなものを取り出すと、その鏡面が怪しく光ったと思うと1つの映像が再生される。

 そこには今までのより数段巨体のグールが、ラパンを一方的になぶっている様子が映しだされていた。


 
 
 

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